2009-11-18 20:15
ED後設定でデュクユリです。オルニオンにての再会。
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人の街に立ち寄ったのは、随分久しぶりのことだった。
騒がしい喧騒。
向けられる好奇の目。
やはりどれも、慣れるものではない。
曲がりなりにも人間でありながら何を、とは思うが、ここ数年は本当に、人とまともなコミュニケーション
をとっていないのだから仕方が無い。
そう、あのユーリという青年達を、除けば。
「―――デューク?」
名を呼ばれて、反射的に振り返る。
―――反射?
否、期待していたのだ、この街に来たときから。
その影を探して。
全ての始祖の隷長が精霊と成った今、己の名前を知っている者はほんの僅かにしかいない。
人魔戦争で何度か顔を合わせたことのある、あのシュヴァーンという男か、もしくは―――。
「・・・・・・ユーリ」
「ああ。久しぶりだな、デューク。あんた、目立つからすぐ判ったよ」
そこにいたのは、果たしてユーリだった。
己の価値観を打ち壊し、終焉を迎えた世界に新たな道を示し。
自ら暗がりに身を投じながら、灯り続ける光で人々を導く、美しい人間。
―――タルカロン以来、己の心を縛り付ける。
「珍しいな、デュークがオルニオンにいるなんて」
「オルニオン、と言うのか。この街は・・・・・・」
「おいおい、名前も知らねぇ街に、何しに来たんだよ」
「さぁ、何故だったかな・・・・・・」
「本当に変わんねぇな、あんた・・・・・・」
判んねぇ、と、言いながらもユーリはけらけらと笑っていた。
このユーリと言う青年は、笑うと途端に印象が幼くなる。
下げられた眉も、緩められた頬も、緩く弧を描く唇も。
全てが可愛らしく自分の目を捉えた。
―――可愛い?
可愛いと言うのは、男性への表現として少し間違っている筈だ。
おかしい。
「まぁいいや・・・・・・この街はさ、ついこの間出来た街なんだ。結界魔導器を持たずに生まれた街。
まだまだ開発途中で、騒がしいのが嫌いなあんたは苦手かもしれないけど・・・・・・良い街だろ?」
「そう、だな・・・・・・お前がそう言うのなら、そうなんだろう」
眩しそうに目を細めて言うユーリを否定できず、曖昧に頷く。
けれど確かに、言われてみれば、辺りは騎士団もギルドも混じりあい、商品の売買や新しい建造物の
建築で他の街には無い活気に満ちている気がした。
というか、この街に着いてからユーリの姿ばかり探していたので、そんなところまで見ていなかった。
・・・・・・・・・?
今、また自分は何かおかしな事を考えていなかったか?
「おう、ユーリ! この間は助かったよ!」
「お互い様さ、次の仕事もうちに頼むぜ」
「ユーリ! たまには酒場にも顔を出してよ」
「そのうちな」
こうして二人で立っているだけで、ユーリは様々な人間に声を掛けられた。
慕われているのだろう、ということが良く判る。
善い事だ。
しかし何故だか、自分の気分が沈んでゆくのがわかる。
おかしい。
おかしい。
さっきから、ユーリと会ってから、否、もしかするともっとずっと前から。
自分はどこかおかしい。
「―――っと、悪いなデューク。話の途中だった。それで、あんたが良ければこの後―――」
ユーリがまた、こちらに意識を向け話し出す。
それだけで、さっきまで沈みがちだった気分がすっと良くなった。
ああ、否、否。
そうか、これは、おかしな事なのではない。
己は、ユーリを好いているのだ。
つまり、先ほどの感情は嫉妬ということだ。
何ということはない、人間としては普通の感性である。
ただ久しく、忘れていた感情だから戸惑ってしまった。
―――そうか、私はユーリが好きなのか。
何だ、では簡単な事ではないか。
「ユーリ」
「え? あ、うん、何だ?」
「どうやら私は、お前が欲しいようだ」
「・・・・・・ん?」
ユーリが、何か珍妙なものを見る目で私を見つめている。
ぱちぱちと瞬きをする様子が何とも可愛らしい。
しかし、伝わり易いように出来るだけ直球の言葉を選んだつもりだったのだが、いまいち伝わっていないようだ。
「だから私は、」
「ちょーっと、ちょっと待った!」
しかしもう一度私が口を開く前に、私とユーリの間に身を滑り込ませる者があった。
このひょうきんな声は、おそらくシュヴァーンだろう。
何と邪魔な。
「ちょっと、え? なに? おっさん今、ね? ちょこっと会話聞こえちゃったんだけど? なに人のお姫様
口説いちゃってんのデューク!」
荒い呼吸がいかにも耳障りだった。
体格の良いシュヴァーンに隠れて、ユーリの姿が見えにくくなる。
不愉快だ。
「いや・・・・・・おい? おっさんもデュークも・・・・・・話が見えねぇよ、どういう事だ?」
「青年は知らなくてもいいのよ」
「私がお前を好」
「わーっ! ちょっと!」
これ以上ライバルが増えんのはホントに勘弁よっ! とシュヴァーンが吼える。
意味が判らない。
―――が、これ以上ここで押し問答をするのも不毛だ。
「ユーリ、お前はここに住んでいるのか?」
「え? あー、そうだなぁ。ギルドの本拠地も正式にここに置かせてもらえることになったし、まぁ、そうなんのかな」
「そうか、ではまた来る」
最後くらいは邪魔されないよう、ぐい、とシュヴァーンを押しのけて、ユーリに近づいた。
美しい黒髪を手に取り、再会を誓って口付ける。
ユーリの表情は、あえて見なかった。
「―――お前に会いに」
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デューク、ユーリに恋をする(笑)
デュークは、一途過ぎて相手も自分の事好きだとか思い込んじゃって、
贈り物とかがんがんしちゃって、とか、とにかく周りが見えなくなりそうwwPR
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