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2009-11-18 20:25

彼と自分について


ラピユリ。ラピード視点でユーリ考察。


―――――――――――――――



年季の入った木製の扉を押し開け、中に入る。
室内の調度品はどれも古い。
しかし、そこには不快感は無い。
むしろ使い込まれたそれらは、月日と共に色を深め、懐かしみのある飴色になっている。
そうした温かい色合いの部屋の中心には、清潔なベッドが置いてある。
ベッドの上には、シーツの白と対比するように黒い人間が眠っている。



自分は躊躇う事無くそのベッドに前足を乗せ、眠っている人間の耳元で一つ、吼える。
驚かせてしまってはいかないので、あまり大きくは息を吸わない。
すると、じっくり五秒ほど掛けて、髪も服も、瞳も黒い人間が目を覚ます。
そして自分の頭を撫で、挨拶をする。
自分も挨拶を返す。



それが自分の朝の、概ねの日課である。















今自分たちは、旅の途中に、大きな桃色の花の咲く街にやって来ていた。
しばらく休息を取っていたのだが、これより出発するらしい。



らしい、というのは、自分は人間ではないので、人間の言葉を理解できない。
ただそうであろうと感じているので、”らしい”なのである。



宿の外に出た自分の隣で、黒い髪と黒い服と黒い瞳の人間が大きな欠伸をする。
この黒い髪と黒い服と黒い瞳の人間はユーリという。



自分の唯一の相棒である。



彼は幼い頃から聡明で気高く、美しかった。
その為に、彼の周りにはいつも人があった。
それは大抵が彼にとって良い者であったが、時に悪いものも居た。
普段は良い者だが、時によって悪くなる者も居た。



そんな時、自分は決まって彼を守った。



何故なら自分はユーリの相棒であり、ユーリは自分を必要としているからである。






そうしていると、待たずして仲間たちが宿屋から出てきた。
黒い肌の騎士と、桃色の髪の女と、クリティアの戦士と、幼い男児と、大きな本を持った学士である。
彼らはレイヴンといい、エステルといい、ジュディスといい、カロルといい、リタといった。



彼らは決まってユーリと行動をとりたがった。
何故ならユーリは聡明であり、また自分の相棒だからである。
こうして仲間たちと行動するとき、時と状況が許す限り、またユーリが拒まない限り、自分は彼の側にいるよう心がけた。
何故なら彼は聡明であるが故に愚かで、よく自らに謂れの無いことで怪我をするからである。



そして自分には、彼を守る役目が与えられているからである。






道中、レイヴンがユーリに何事かを語り掛ける。



”何を”言っているのかは解らない。
しかし”何と”言っているのかは判る。



それが自分にとって不愉快な内容だったので、鍛え上げた尻尾で、背中をはたいてやった。
するとレイヴンは悲鳴を上げ、自分に向かって何か不満を言った。
これに対して自分は何かを返してやることも出来たが、自分は間違ったことをしておらず、間違ったことをしていないということは文句を言われる謂れも無いので、鼻を鳴らして顔を逸らした。



するとユーリが自分の頭をおもむろに撫で、「あまりレイヴンを苛めてやるなよ」と、そう言った。



”何を”言ったのかは解らない。
しかし”何と”言ったのかは判る。



その言葉には少しだけ非難の色が含まれていた。



ああ、やはり自分の相棒は聡明で、美しく、しかし愚かだ。
この男がどんな感情を持って、どんな目でユーリを見ているのかにまったく気づいていないのだから。






しばらくして、小さな魔物の群れと、二度ほど戦闘になった。
どちらも大した敵ではなかった。



中には自分と同じような姿をしたものもいたが、そのどれもが自分よりも短い牙を振りかざし、自分よりも小さな声で吠え立てた。



しかし二度目の戦闘で、集中しているのか目を閉じている少女を庇って、ユーリが怪我をしたのが判った。



気づいているのは自分だけのようだった。



何故なら、自分はこの場にいる誰よりも、”鼻”が効くからである。
魔物を掃討し、自分はそれをエステルという少女に伝えた。
しかし何故か彼女は嬉しそうに自分に話しかけるばかりで、まったくユーリを治そうとしなかった。



何てもどかしい!



仕方が無いので、ユーリの周りを一周し、吼え、そしてもう一度エステルを見て吼えた。
仲間たちが不可解そうな顔をしているのが解った。
それは自分にも解った。



これほど明確に示しているのに、何故判らないんだ!



結局、少し乱暴だが自分がユーリの服を引っ張って傷を見せてみせ、それでようやっとエステルは治癒を開始した。
ユーリの傷がみるみると治っていくのを見つめ、自分は気付かれないよう溜め息をついた。



まったく疲れる。



何故人間とはこうも賢く、力もあるのに、絶望的に察しが悪いのか。



しばらくして、ユーリがこちらに歩いてくるのが見えた。
自分の頭を撫で、「やっぱラピードに隠し事は出来ねぇな」と言い、「ありがとう」と言った。



自分はそれに応えるべく、足を揃え胸を張り、誇らしげに一声吼えた。



”何を”言っているのかは、相変わらず解らない。
しかし、自分を賛辞しているのは判る。



何故なら自分はラピードで、彼はユーリだからである。






そして自分たちは相棒だからである。
















―――――――――――――――

ラピードは人間の生々しい感情とはまた違う方向で、ユーリを大切に思ってる・・・・・・
っていう感じが伝えたかったんですが、まったく伝わっていなささに絶望(汗)
思いつきで突発的に書くのは良くないと何度目かの反省・・・・・・
難しいよラピード!
だって犬だもの!
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