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2009-11-18 19:41

秋の夜長に花と酒

オールキャラでレイ→ユリ。ちょっとギャグ。

「はぁー、最近めっきり冷えて来たわよねぇ」



もうすっかり秋だわぁ、と間延びしたレイヴンの声が、ダングレストの乾いた空気を震わせた。



確かに、すっかり色づいた街路樹も、帰路を急ぐ人々の厚着の目立つ姿も。
すっかり秋の様相だった。



大陸から大陸へ、吹雪の流氷から熱砂の砂漠へ飛び回る彼らにとって、季節などあって無きに等しいものだが、少なくともここダングレストでは、足音が聞こえるほど間近に、冬が迫っていた。



しかし他の仲間たちは各々雑談をしたり通り過ぎた店を伺ってみたりしていて、少々の寒さなど気にも留めていないようである。
まあ、そのくらいのタフさが無ければ旅などやっていけないのだがしかし、つまり最後尾を歩くレイヴンの言葉は必然的に独り言となっていた。
けれどレイヴンはむしろ先ほどよりも声を大きくして、肌寒いー肌寒いわぁーと繰り返した。



言外に「構って」という意思が明確に見える言い方である。



それに気づいているからだろう仲間たちはあからさまな無視を決め込んでいるが、ここでめげないのが
おっさんのおっさんたる所である。




「ねぇってばぁユーリー、おっさんさむぅい」




とうとう名指しで絡んできたレイヴンに、リタが小さく「ウザッ」と顔をしかめた。
まとわりつかれていい加減『シカト』という方法でいなすことを諦めたのか、ユーリが気だるげに振り向いた。




「ったく、さっきからグチグチと・・・・・・何が言いたいんだよ、おっさん」




放っておけばいいのに、最終的には話を聞いてやるこの人の良さも、またユーリのユーリたる所だ。
ようやくこちらへ意識を向けてくれた事で勢いを得たのか、レイヴンはユーリの肩にもたれかかるように
引っ付き、意味ありげに笑った。




「実はおっさん、この間知り合いから良い酒貰っちゃってさぁ・・・・・・今晩どうよ?」




つまりは一緒に晩酌でもやらないか、ということらしかった。
先ほどからしつこいくらいに寒い寒いと繰り返していたのも、酒を呑んで体を暖めたいという遠まわしな
意図を含んでのことだったようだ。



何と判りづらい。



更に、クイッと人差し指と親指でジェスチャーを交えるあたりがもう完全におっさんだったが、”良い酒”
というワードに惹かれたのか、ユーリはこの提案に意外にも喜色を示した。




「んー・・・・・・まぁ、たまにはいいかもな」
「おっ、マジ? 良かったわー、おっさん一人で酒盛りなんて寂しいと思」
「ちょっ、ちょっと! そんなの駄目に決まってるでしょ!?」
「ひどいわおじさま、私は呼んでくれないの?」




思わぬ返事に歓喜の声を漏らすレイヴンだったが、その台詞を言い終わることすら出来ぬうちから横槍が入った。
リタとジュディスである。



そうなのだ。



他人に対してはよく気が利くくせに、自分の事になると途端に鈍くなるユーリに代わってとばかりに、このメンバーの女性陣はユーリに対するガードが硬い。



特にジュディスなどはユーリへの執着心が強く、こうして少しでもレイヴンが下心を見せようものなら
(それは今ここにいない騎士団長代理に対してもまた然りであるが)すかさず妨害をしてくるのである。



声を聞きつけて、少々前を歩いていたエステルたちも戻ってきていた。
短い幸せだったなと、レイヴンが項垂れる。




「何の騒ぎです?」
「うちも混ぜるのじゃ!」
「・・・・・・何かあった? レイヴン」




一人自分を気遣ってくれるカロルに心和みながらも、もはや決定したように今晩の酒盛り―――否、宴会について話し合う仲間たちをみて、レイヴンはひっそりと溜息をついた。




















ダングレスト宿屋 『アルクトゥルス』―――



結局、レイヴンの計画していた、『ユーリと二人っきりの晩酌』はフルメンバー参加の宴会へと相なることになってしまった。



ジュディスは、一応未成年ではあるものの、イメージ通りというか何と言うか、酒の呑み方を心得ているようで、つまみのナッツを食べながらゆっくりとグラスを傾ける程度であったが、エステルとリタは頬を染め、テンションが徐々に上がってきているのが判る。



カロルとパティには流石に早すぎるとレイヴンが止めたのだが、仲間はずれは嫌だとごねるので結局
そのままになってしまい、ペースが掴みきれずジュースのように呑みまくるので、宴会を始めてまだ一刻と経っていないというのにすっかり出来上がってしまっている。




「ユーリィ!」
「ぉわっ」




パティが、ベッドに座っていたユーリの腹に顔を埋めるように抱きついた。
勢いで質素なベッドがぎしりと軋んだが、パティはおかまいなしでぎゅうぎゅうと腕に力を込める。
時折のぞくその顔はこれ以上ないほど真っ赤に染まっている。



パティ風に表現するならば、正に煮え湯に投げ入れられたタコである。




「ユーリー! 愛しておるのじゃー」
「はいはい」
「ユーリは将来、うちの嫁になる運命なのじゃ!」
「普通、逆だろ」




いつもならキリの良いところで引き剥がすユーリだが、自身も酔っているためかパティの好きなようにさせていた。
よく見るとその雪のように白い肌はアルコールでしっとりと汗ばみ、目元と唇は朱を引いたように赤く色づいている。
更に、暑いらしく帯とブーツまで脱いでしまっており、パティの可愛らしいプロポーズにふにゃりと笑う表情はもう、眼福を通り越して誘っているとしか思えなかった。



特にジュディスとレイヴンの心の内はかなり大荒れである。
つまるところ、




(羨ましいっ・・・・・・・・・!)




―――のである。
パティは普段から割合とああであるし、何より打算などなく天然で出来てしまうところがまた、素直でな
い彼らにとっては羨望に値するところなのだ。




「お、おっさんもユーリのこと好きー!」




ユーリとパティの微笑ましい戯れに、とうとうレイヴンが負けられないとばかりにがばりとその細腰に抱きついた。
酒の勢いを借りた暴挙とも言えるその行動に、背後で黒い炎が燃え上がるのが肌で感じられる。
しかし、それすらもそのときのレイヴンには些細なことでしかなかった。




「レイヴン、くすぐってぇよ」




何故ならば、常であれば抱きつくや否や五秒で裏拳を飛ばす筈のユーリが、けらけらと笑いながら名前まで呼んで、大人しくその抱擁を受け入れているからである。



レイヴンは心中で叫んだ。



嗚呼、素晴らしきエチルアルコール!




「・・・・・・嫌がんないの? ユーリ」
「何だよ、嫌がってほしいのか?」
「そーゆーワケじゃないけど・・・・・・」




体を密着させても拒む素振りのないユーリに、レイヴンはここぞとばかりに欲目を出した。
腰に置いていた手をもぞもぞと動かす。




「・・・・・・おっさん、期待しちゃうわよ?」
「え、ちょ、どこ触って―――」
「飛燕崩蹴月ッ!」




大きく開いた胸元から、レイヴンが手を滑り込ませた瞬間、先ほどまで持っていたグラスを槍に持ち替
えたジュディスの術技がタメ無しで発動された。
槍で突き上げられた上に蹴り落とされ、止めに鎌鼬で切りつけられて、レイヴンの口から奇声の様な悲鳴が漏れる。




「私の前でユーリの肌に触れるなんて良い度胸ね、おじさま」
「嫁の貞操は夫が守るものなのじゃ」
「不潔です!」
「これだからセクハラ親父は・・・・・・!」




女性陣の後ろに般若が見える。
どうやら悪ふざけが―――半分以上本気も入っていたが―――過ぎたようだとようやく気づいたレイヴンが、腕を目の前でぶんぶんと振って弁明した。




「いやっ・・・・・・違うのよこれは! ちょっと悪戯しちゃおうかなぁって思っただけで! いくらおっさんで
もこんな人目のあるところでヤろうだなんて」
「ネガティブゲイトぉ!」




その夜のリタはまた一段と術の”キレ”が好く、弾けた闇は宿の半分を、綺麗な円形で削り取った。














―――――――――――――――

ユーリの色気ってどうやって伝えればいいんだ・・・・・・!
初めてのヴェスペ小説なので、探り探り。
あとカロル空気(笑

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