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2009-11-18 19:56

乙女思考


ユリエスというよりはエステル→ユーリ。ユーリは気の利く子。


ずぅうん、と背後に効果音でもつきそうな勢いで落ち込むエステルに、レイヴン達はどうしたものかと頭を抱えた。



始まりは、朝のこんなやり取りである。




















カプワ・トリム宿屋 『ポルックス・T』 ―――




「あ、おはようございます、レイヴン!」
「おはよ、嬢ちゃん」
「はい、おはようございます」
「? ・・・・・・うん?」




にこにこにこにこ。



久々に街で丸一日休めるということになり、少し遅めに起きてきたレイヴンだったが、部屋の前で待ち
構えていたかのように出会ったエステルに、小さく疑問符を飛ばした。
トイレに行こうと思っていたのだが、エステルがさり気なく進行方向を邪魔してきて通りづらい。
挨拶をすましても、にこにこと笑うばかりで何も言わないエステルに、レイヴンが当惑して口を開いた。




「あのー・・・・・・嬢ちゃん? おっさん、おトイレ行きたいんだけど―――」
「どう思います?」
「は、はい?」




レイヴンとしては、暗にそこを通してほしいという旨を伝えたつもりだったが、それすらも言い終わらない
うちに主語も何もない問いで返されてしまい、ますます困窮してしまう。



普段、飄々とした態度で相手を翻弄する側であるレイヴンとしては珍しい反応だったが、生憎ここにはそれを見て楽しむ仲間は誰もいない。



ああ、ヤバい。



レイヴンは内心で冷や汗を流す。



行けないと思ったらますます行きたくなってしまった。
どうしよう、俺様ってば朝はトイレ→歯磨き→朝食の順で始めないと気が済まない派なのに!



そわそわと足踏みするレイヴンをまったく気遣わず、エステルはずい、と顔を近づける。
珍しいといえば、普段お姫様らしくおしとやかで、自己主張の少ないエステルがこんなにしつこく食い下がるのも珍しい。




「今日の私、どうですか? おかしくありません?」
「ええ? ああ、うん。いつも通りでしょ? おかしくなんかないわよ? 可愛い可愛い」




焦燥のあまり返答も普段に比べてぞんざいなものになる。
実際一見したところ、さらさらと涼やかに揺れる髪も、しわ一つ無く輝く衣服も、行儀良く揃えられた踵も何もかも(レイヴンからすると)いつも通りである。



ぞんざいとはいえ嘘は言っていない。
しかし、だから早くトイレ、と続けるはずだったレイヴンの言葉は、エステルの重い溜め息に飲み込まれてしまった。
ちろり、と非難するような目で見られている気がして、レイヴンは焦る。



何故睨む。



褒めたのに!




「もういいです・・・・・・トイレにでも何でも行けばいいじゃないですか」
「え、何その投げやりな感じ? おっさん何かした? ちょっと、気になって出るモンも出ないじゃない!」
「不潔です!」
「ふぎゃ!」
「ちょっと朝からうっさいのよおっさんストーンブラスト!」
「うぎゃあああ!」




べし! とエステルにしては暴力的に咎められ反射的にレイヴンが悲鳴を上げると、隣の部屋の扉が
荒々しく蹴り開けられてリタの術式が発動した。



安宿の蝶番がぎしぎしと嫌な音をたてるが魔導士は無視。
一応屋内だということを考慮してのストーンブラストらしかったが、宿屋の廊下という避ける場所のない
狭い場所でレイヴンはもろに直撃を受けてしまった。



重い石つぶてが落下する重厚音に、部屋で休んでいたカロル、ジュディスも何事かと廊下に集まる。
救いであるユーリとラピードは出掛けているようだった。




「朝から騒々しいわね、何事なの?」
「おっさんがうっさいのよ」
「うわ! レイヴンどうしたの!?」
「うう、少年助けて・・・・・・」
















「非道いですみんな。誰も気付いてくれないなんて・・・・・・」




困り顔の仲間たちを前に、エステルはしゅんと肩を落とした。
レイヴンも無事に用を済ませた後。



仲間たち一人一人に、エステルは先ほどの「今日の私、どうでしょう?」という問いを繰り返したのだ。
しかしどうだと聞かれても、服も武器もいつも通りで、レイヴンと同様に意味が判らず、何のことかと問い返し―――ここでやっと、冒頭に戻る。




「―――おいおい、こんな廊下の真ん中で何やってんだ、お前ら」
「あ、ユーリ!」




そんな中、平然と―――事情を知らないのだから当然だが―――帰ってきたユーリに、カロルが助
かったとばかりに飛びついた。
ラピードが、「どうせまた下らねぇ事で揉めてんだろ」とでも言いたげに鼻を鳴らす。



そして事実、まったくその通りである。




「おっと。どうしたカロル? ほら、朝飯買って来たぞ」
「わぁ、ありがとユーリ!」




点々と転がる岩石を、「邪魔くせぇな」と蹴り飛ばし、ユーリがサンドイッチなどの軽い食事の入った紙袋を手渡した。



恐るべき泰然自若ぶりである。
他のパーティにも渡そうと皆を振り返り、そこでユーリは初めて訝しげな声を上げた。




「あれ、エステル、髪切ったのか?」
「・・・・・・・・・ッッ!」




一同に驚愕の嵐が吹き荒れる。



そうなのだ、エステルが何を気付いて欲しかったのか。



それは髪型なのである。



このカプワ・トリムという港町にも、もちろん美容室はある。
朝の散歩に出かけた折、エステルの趣味に合うお洒落な美容室を見つけ、衝動的に切ってきてもらったらしいのだ。



しかし所詮は毛先をそろえる程度、レイヴンはともかく仲の良いリタでさえ気付かなかった。



それを男であるユーリが、それも初見で見破るなど・・・・・・!
―――というのが、仲間達の胸中である。




「え・・・・・・わ、判るんです!?」
「そりゃ判るよ。ちょっと短くなったな?」




なってねぇよ!
どの辺が!?



という抗議が後ろで静かに上がっているが、エステルは完全に無視である。
ぽんぽんと頭を撫でるユーリに、エステルが思わずといった風でぎゅう、と抱きつく。



そのエステルの表情は本当に嬉しそうで、パーティもまぁいいか、と最終的には納得のいかない心を
振り切らざるをえず、ひとまずはユーリの買ってきてくれたサンドイッチでも食べようと、心を切り替えた。




まったく、お姫様の気まぐれとは恐ろしい。















―――――――――――――――
ユーリは絶対にそういう、女性の細かいトコとか気付きそう。
無意識にいろんな人きゅんきゅんさせそう。
絶対(萌)
あといつものことだけどオチ微妙だ・・・・・・
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