忍者ブログ

2025-07-20 01:18

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2010-02-27 21:55

リクエスト小説







――――――――――――





空を覆う星喰み。



輝きを失った聖核。



そして、血溜まりに倒れるユーリ。



正にそこは、レイヴンの瞳に地獄を映し出した。




「あぁああぁあ! ユーリ!」




弓を投げ捨て、ユーリの元へと駆け寄る。
ソディアが何事か言っているようだったが、それすらレイヴンには聞こえなかった。



ユーリの傍に膝をつき、傷を診断。



帝国騎士団の刻印がされた小剣はユーリの細い脇腹を背中まで貫通。
蒼白な顔からは脂汗が滴り、その柳眉は苦しげに寄せられていた。
ごぼり、とユーリの口から血の塊が吐き出される。




「ユーリ! 死なないでくれ!」
「どいて下さいレイヴン! 治癒術をかけますッ!」
「まだ十分助かる!」




ほとんど半狂乱になって、無理やり剣を引き抜こうとするレイヴンを、焦燥の色濃い声と、言い聞かせるような言葉が止めた。
エステルとフレンだ。



これ以上内臓を傷付けないよう、焦る気持ちを抑えながらゆっくりと剣を引き抜き、同時に全力で治癒魔術を発動させる。
背後で見守る仲間たちも、祈る面持ちでその様子を凝視した。



死ぬな。



死ぬな。



死なないでくれ!



心臓を失った十年前に、この世に神がいない事を知った。



それでも、祈らずにはいられなかった。
ユーリの、温度を失った手を握り締め、青白い頬を撫でる。




「畜生! 血が止まらない!」
「もう、もう一度です!」

「・・・・・・どうして」




必死の治療を呆然と見つめていたソディアが、フレンの罵声を聞いてぽつりと呟いた。
小さな、ささやき声とも言えるはずのそれが、レイヴンの耳を掠める。




「どうして、そんな奴を助けようとするんだ」




レイヴンは、怒りで脳が沸騰する思いだった。



ほとんど反射の速度で拳を握り、ソディアの顔を殴り飛ばす。
めぎり、と骨のぶつかる嫌な音が響く。



フレンも、驚愕と憤怒が混ざり合った表情でソディアを見つめていた。




「ふざ、けるなよ、絶対善に固執する未熟者が! ”そんな奴”だと、どの口が言える!? 後手に回った騎士団の
始末をしてきたのは一体誰だと思ってる! 命さえ救われておきながら仇で返すとは、騎士でありながら恥すら
知らないのかっ! 痴れ者が!」




自らの失態を棚に上げ、狭い視野と偏った思考でユーリを非難する。



以前から貴族然とした、危うい性質を持った女だとは思っていたが、まさかここまで愚かだったとは!



レイヴンは膨れ上がる憎悪を込めて、ソディアを睨み付ける。



怒号を受けて自らの過ちに気づいたのか、それとも恐れおののいたのか。
がたがたと体を震わせながら口をつぐんだソディアを見て、レイヴンは痛烈な舌打ちをもらした。



何と器の小さい娘だ。



これ以上相手にするのも馬鹿らしい。




「がは、あ゛あっ!」
「ユーリっ!?」




苦しげな嗚咽に、レイヴンが驚いて膝をついた。
ユーリが突然大量の吐血をし、びくびくと四肢を痙攣させ出したのだ。



ようやく、血が止まりかかったところだというのに!



予想外の症状に、慌ててエステルとフレンが治癒をかける手を止める。




「呼吸がおかしいわ! そんな、どうしてこんな症状がっ?」




ジュディスが、ほとんど悲鳴に近い声を上げる。
ユーリの怪我は剣による刺し傷だ。



内臓損傷や出血多量によるショック症状の筈だが、この痙攣と呼吸不全は何だ!?



唇をかみ締めたレイヴンが、はっと顔を上げると、脇に放られた小剣を手に取った。
体を震わせたままのソディアに詰め寄る。




「お前っ! 剣に毒を塗ったな!?」




レイヴンの怒声に、エステルたちの顔が青褪める。



馬鹿な。



誇り高き騎士が刃に毒とは!



しかしユーリの症状も、それならば頷ける。



こんな時ばかり、何という用意周到さだ!



解毒剤は!?




「薬は!? 持っていないのか!」
「い、今は・・・・・・駐屯地まで、戻れば」
「くそッッ!」




レイヴンが罵声を吐く。
エステルが解毒呪文を唱えていたが、ここまで全身に回っていては意味を成さないだろう。



それも、おそらく塗られていたのは即効性の毒だ。
術でどうにか出来る類ではない。




「時間が無い! バウルを呼ぶわ!」




ジュディスが耳に手をあてる仕草をし、遠くに竜の咆哮が聞こえる。
待つことしか出来ないこの僅かな時間がもどかしかった。




「ユーリ、ユーリ、頼むから死なないでくれ。お前までいなくなってしまったら、俺は本当に生きる意味を無くしてしまう。
頼む死なないでくれ。死なないでくれ・・・・・・」




悲痛なレイヴンの懇願は、ユーリに、あるいは神に聞こえているのか。
姿を現したバウルに、ジュディスが叫ぶ。




「一刻もおしいわ! 早くユーリを! おじさま!」




ぱたぱたと血の滴る体を、レイヴンが丁重に抱き上げる。
ユーリの意識は既に失われている。



それでも暖かい鼓動の聞こえるその体に、レイヴンは縋る様に頬を擦り付けた。
















―――――――――――――――
ユツキ様! まずはリクエストありがとうございます!
フレユリ又はレイユリとのことだったのですが、思い余ってどちらも書いてしまいました(汗)
総受けはさすがに内容がかぶりそうだったので断念したのですが、楽しんでいただければ幸いです!
しかしこのシーンは私も物足りないと感じていたのですが、落下しなかった場合というシチュエーションは思いつきいませんでした!
リクエストを頂いただけで妄想して萌えてましたww
それでは、長らくお待たせいたしまして申し訳ありません!
重ね重ねリクエストありがとうございました!









PR

この記事にコメントする

Name
Title
Mail
URL
Comment
Pass
Pictgram
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

カレンダー

06 2025/07 08
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31

カウンター

バーコード