2009-11-18 20:35
とうとう来たコザユリ(コザクラ→ユーリ)。レイヴンとジュディスも。
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「やあ! また会ったね。合成の情報を聞きたいかい?」
「ああ、頼む」
ノードポリカ。
勝利の喜色と敗北の落胆に彩られ、一時の間断もなく歓声の響く騒がしい街。
騎士の殿堂が統治する、世界唯一のギルド統治都市。
その象徴とも言える、白亜の闘技場内で、ごく気楽に寝転がったまま、ユーリたちに声を掛けてきたのは測量ギルド天地の窖メンバーである、コザクラだった。
と言うのも、各地の街で出会う彼とは既に顔なじみとすら言って良いほどで、この会話もお馴染みとなっている。
辺りの地形や出没する魔物の情報収集も兼ね、ユーリとカロルが話し込む。
これもまたいつもの光景であったが、そんな彼らを、まるで不信感を煮詰めたような色の瞳で見つめる人物がいた。
レイヴンである。
「不機嫌そうね、おじさま。そんな顔してると、ますますしわが増えちゃうわよ?」
「・・・・・・ジュディスちゃん、最近おっさんに対する態度、本当に非道くない? ますますってどういうこと? ねぇ、ますますってどういうこと!?」
「ユーリたちのことならいつものことでしょ? 情報収集は大切だわ」
「無視ね、無視なのね・・・・・・ああ、女子ってコワいわぁ・・・・・・」
しばらくぶちぶちと文句を垂れていたレイヴンだが、満足するまでめそめそすると、それでね、と唐突に話を続けだした。
ジュディスはにこにこと笑ったまま相槌をうっている。
流石に、彼の扱い方を心得ている。
「あの・・・・・・コザクラくん、だっけ? ちょっと出現頻度、高すぎでない?」
「・・・・・・まぁ、そうね。私もそれについては、いつか言及しなければならない日が来ると思っていたわ」
レイヴンの言葉を受けて、ジュディスの目が剣呑に細められる。
先ほど彼との関係について”各地の街で出会う”と記したが、実はこれには僅かに誤りがある。
いや、誤りと言うよりは、説明不足と言うべきか。
正しくは、各地の街で”必ず”出会う、である。
レイヴンたちが不審がるのも無理はない。
何せ例えば、これからすぐにマンタイクに向かったとして、そこにはやはり彼はいるし、そこからまたノードポリカにトンボ帰りをしてきても、彼は恐らくここにいるだろうことが容易に予想されるほどなのだ。
流石にミョルゾとヨームゲンには居なかったが、そんな所にまで現れられては人間であることを疑ってしまうだろう。
いずれにしても神出鬼没。
その一言に尽きた。
「はっ・・・・・・! まさか、おっさんのストーカーなんじゃ」
「馬鹿言わないでくれよ! 誰があんたみたいなおっさん追いかけて喜ぶんだい」
神の啓示でも受けたかのように呟くレイヴン、その頭にジュディスが踵落としを決める前に、心外だとばかりにコザクラが反論した。
ぎょっとする二人を、腰に手を当てて見下ろしている。
振り返ってみれば、先ほどまで彼がいた所では、ユーリとカロルがそちらも驚いた表情でコザクラの姿を探している。
何てことだ!
この神出鬼没男、まさかテレポーテーションを習得しているのか!?
などとレイヴンが阿呆な考えを巡らせている間に、衝撃から立ち直ったジュディスが彼に裏のある笑みを向ける。
「人の会話に割り込むのは感心しないけれど、聞いていたのなら話は早いわ。貴方、何故いつも私たちの行く先々にいるのかしら。まさか偶然ではないでしょう?」
「うーん・・・・・・」
ジュディスの問いに返す言葉に迷っているのか、それともはぐらかす方法を考えているのか、人好きのしそうな柔和な表情で悩む彼に、ユーリとカロルが近づく。
「おいあんた、急に居なくなるなよ」
「・・・・・・うん、別に隠すようなことでもないし良いかな」
「はぁ?」
不可解そうな顔をして首をかしげるユーリに、コザクラがにっこりと笑って告げる。
その内容はユーリ―――達、というべきかもしれないが―――にとって、死刑宣告よりも驚愕的な内容だった。
「僕は君のストーカーなんだ!」
「・・・・・・えぇえええぇ」
沈黙。
今の状況を限りなく簡潔に述べようとすれば、最後に残る単語はそれだった。
ついで、衝撃と混乱と脱力の嵐が巻き起こる。
リタやエステル達がいなかったのがせめてもの救いだろう。
「隠すようなことでもあるんじゃないかしら、それ」
「ユーリのストーカーならもう二人だけで手一杯よ!」
「おい待て! 二人って誰だ!?」
ジュディスが呆れて肩を落とし、レイヴンが勘弁してーと絶叫し、ユーリがレイヴンの発言に瞠目する。
ストーカー対象であるユーリ本人は気づいていないようだが、ストーカー二人とはもちろんザギとフレンのことである。
「あれ? 言い方が悪かったかな。僕は君に一目惚れしたんだ!」
「尚悪くなってるよ!」
カロルが天を仰いで訂正する。
「デイドン砦の騒動の時は、流石に肝が冷えたよ、姐さん。まったく無茶するんだから」
「姐さんじゃねぇから!」
「ていうか僕たちアスピオが初対面だと思ってたんだけど!? コザクラさんの一目惚れっていつ!?」
闘技都市の賑わいは途絶えない。
しかし今日は、そこに更なる不穏な彩が、添えられようとしていた。
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自分ですらどうかと思うマイナーカプ!
でもホントに行く先々で会うんだもん!
リアルストーカーしか思えねぇ!
そう考えるとヴェスペリアってストーカー多いなあ。
ユーリに「姐さんじゃねぇから」って言わせれて満足。
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