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2009-11-18 20:45

愛しい手/前編


ナイレン生存妄想でナイユリでレイユリ。中篇からED後設定です。
あんまり感じませんがユーリが女体化してますので苦手な方注意!
その他諸々捏造あります!


―――――――――――――――



その時のことを、レイヴンはよく覚えている。



”彼”との再会は、意外なことに騎士団というものから最も縁遠い、ダングレストの街だった。



夕暮れの朱に染まる街。



荒くれた者たちの喧騒も、どこか遠くから聞こえるような。



ロマンティシズムな言い方をするならば、まるで過去に、時間が逆戻されたように。



”彼”は、変わらぬ姿で、そこに居た。



―――否、確かに明朗な表情はレイヴンの記憶のままだったが、あのがっしりとした体躯は幾分、痩せていたように思えた。
騎士団の服を着用してはいたが、鎧ではなく、それはむしろ士官のような印象を受けた。
あの事故の所為か左足を面倒くさそうに引き摺り、松葉杖をついていた。
しかし逆に言えば、あの頃と変わったところは、その程度しか見られなかった。



無頓着に伸ばされた無精髭も、力強い光をたたえた褐色の瞳も、その口に銜えられたキセルさえも。



全てが懐かしく、あの頃のままだった。



最初に気付いたのはラピードだった。
街に着いたときから珍しく興奮気味で、しきりに鼻を鳴らしてはきょろきょろと辺りを覗っていた。
そして、レイヴンの耳にこつこつと、石畳を叩く硬質な音が聞こえたときには、ラピードは既に駆け出していた。
”彼”の足元にじゃれつくように顔をこすりつけ、周りをぐるぐると回った。
逆光で最初こそ誰だか認識できなかったが、近づき、数メートルまで迫ったところで、ようやくその存在を認めることが出来た。



驚いた。



目を疑った。



恐らくユーリもだったろう。



背後で、リタが小さく息を呑む声が聞こえた。



”彼”はひとしきりラピードを撫でた後、ゆっくりと立ち上がり、自分たちに向かって穏やかに笑んだ。



―――嗚呼、否、否。



己ではない。
彼が見ていたのは、彼の目に映っていたのは、ユーリただ一人だけだった。
過去に関わりのあったらしいリタも、隊長格同士で面識があった―――レイヴンとしての自分を知っていたとは思えないが―――レイヴンの事も、まるで気付いていなかった。



運命的とすら呼べるその邂逅だった。



小さく震える肩でようやく、ユーリが泣いていることに気付いた。



その姿を見たときの衝撃は、未だにレイヴンの胸を震わせている。



レイヴンは、ユーリほど強い人間を見たことが無かった。
あるいは、自分があまりにも弱かったから、ユーリが一層に眩しく見えたのかもしれない。
どちらにせよ、ユーリが涙を流す姿など、想像することすら出来なかった。



少なくとも、レイヴンには。



信じられないものを見ている目だった。



信じたいけれど、信じてもいいものか迷っている目だった。



柳眉を悩ましげに歪ませ、噛み締められた唇からは声にならない思いが漏れていた。
痛々しく思えてしまうほどに左手を握り締め、けれども足は惑い、何かに絡みつかれたように動いていなかった。



とめどなく溢れる涙を、レイヴンは拭ってやることが出来なかった。
頬を濡らし、橙の光を受けて光るそれが、ひどく美しく見えたのだ。




「そう泣くな、ユーリ」




”彼”が言った。



ユーリは泣いていた。



レイヴンは目を閉じた。










それがユーリと―――ユーリがただ一人師と仰ぐ、ナイレン・フェドロックとの、実に三年ぶりの再会だった。
















―――――――――――――――
映画を見て隊長があまりにもヤバかったので早速ナイユリネタ!
ネタバレをまったく見ずに行ったのでラストでああああってなりました。
隊長ああああ。
ナイユリああああ。
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