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2009-11-18 20:23

情熱的な執着心

ED後設定でザギユリです。レイヴン、ジュディスに宣戦布告。


―――――――――――――――



「ちょ・・・・・・ユーリ! なんてモン連れてるのよ!?」



ギルドの巣窟ダングレスト、そのユニオン本部。



レイヴンは存在すら既に過去のものとして抹消しかけていたその人物を見て、思わず叫声を上げた。
ユーリがこの街に立ち寄ると聞いたから、書類も会合も全て放り出してきたと言うのに。
このところ、雑事を押し付けられ、ダングレストに縛り付けられていたレイヴンは、もうしばらく、ユーリの顔を見ていなかったのだ。



そんな事情からそわそわと到着をまっていたレイヴンだったが、の目に映ったのは、忌々しい攻撃的な色の頭。
ユーリの背後にぴっとりと寄り添っていたのは、よりにもよってあの執拗な暗殺者、ザギだったのだ。



あのタルカロンと言う巨大な墓標の下に、ようやく眠らせたと思っていたのに。
その表情は、あの頃の狂気に染まった笑みではなく、まるで憑き物が落ちたように人間らしいものになっていたが、そんな事はどうでもいい。



興味も無い。



そう、ザギという人間が生きていたと言う事実だけなら、レイヴンもさして驚かなかった。
旅をしていた頃から、尋常でない化け物じみた生命力を見ていたのだから、「何だ、未だ生きていたのか」と、その程度だ。



しかし問題なのが、そのザギが何故かユーリと一緒に行動していて、ユーリもそれを拒んでいないという事である。
問うても苦笑するだけのユーリに焦れて、レイヴンは咎める様な視線を、共に来ていたジュディスとカロルに向けた。




「私たちだって反対したわもちろん。こんな危険人物、ユーリの側に置いておく訳にいかないもの」
「でも、ユーリが・・・・・・」




いいって言うから。
そう言って、カロルは俯く。



レイヴンは勘弁してくれと天を仰いだ。



まったく、本当に、どれだけ懐が深いんだこの阿呆は!



五度にも渡って刃を交えた戦闘狂だぞ!



心配するこっちの身にもなってくれ!




「・・・・・・青年、おっさんの神経擦り切らす気?」
「別に、そんなつもりはねぇんだけどな」




荒れる内心を抑えて、遠まわしに責めても、ユーリはどこ吹く風だった。
オーライ、とレイヴンは手の平を揺らす。



ともかくも、折角の久しぶりの再会なのだ。



思わぬ存在のおかげで出鼻をくじかれてしまったが、本当はこの場で抱きしめてしまいたいくらいなのである。
聞きたい事も言いたい事も多々あるが、ここは少々騒がしすぎる。




「ま・・・・・・とりあえずはいいわ。場所を移しましょ」



















ダングレスト酒場 『天を射る重星』



レイヴンはその貴賓室に皆を案内し、いくつか適当に飲み物と料理を注文すると、後は誰も入らないようにと指示した。
いちいち会話の腰を折られては面倒だ。



軽快なジャズが、レイヴンの耳に流れ込む。




「で・・・・・・どういう経緯で、こんな事になったのよ?」




運ばれて来た料理を遠慮会釈もなくがつがつと掻き込むザギを尻目に、レイヴンは言った。
まったく、判っているのか、いないのか。
ジュディスやユーリとはまた違う意味で、つかみ所のない男である。




「・・・・・・ハルルの病院にいたのを、たまたま見つけたんだ」




そう、本当にたまたまだった、とカロルは語る。



全身に包帯を巻きつけられた姿で、一瞬それと判らない程の姿だった。
否、判別の付かなかったのは包帯の所為ではない。
変わり果てた瞳の色。
それだった。



そこに覇気は無い。



狂気はない。



そこ代わり、喜びも無い。



絶望も無い。



正に虚無。



生存と変貌、二つの意味で驚くジュディスとカロルだったが、ユーリは静かにザギに近づき、ただ一言、「死にたいか」と、問うたらしい。
そしてザギは、「死にたい」と、そう答えた。



カロルはその時、ユーリがザギを殺すものだと思って、制止の掛けかけた。
恐らくジュディスも、そう考えていた。



しかし予想は覆された。



「じゃあ、殺してやらないよ」



そう言って、ユーリは笑ったのだ。



数秒、愕然とユーリを見つめるザギだったが、その瞳に光が宿るのを、カロルは見た。



―――そうしてそれ以来、親鳥の後を付いてまわる雛の如く、ユーリの側を離れないのだそうだ。



大方予想はしていたが、こうして聞くとどっと脱力感がレイヴンを襲った。



ああ、また面倒な奴が現れた。
どうしてこう、この青年の周りには変な虫ばかりが多いのだ。




「成り行きだよ。こいつが勝手に付いて来てんだから、しょうがねぇだろ?」




ウォッカを舐めながら言うユーリに、レイヴンは嘆息する。
ジュディスとカロルは、もうこれまでに何度も説得しているのか、既に諦めているようだった。



「ま、青年がそう言うんなら、おっさんももう何も言えないわねぇ・・・・・・おい、ザギ。うちの大将に何かしたら、承知しないわよ」



レイヴンは、後半の言葉に本気のを滲ませて警告した。
この元暗殺者の、ユーリに対する執着心が半端でないのは判っているのだ。
その執着心と独占欲を、殺す事によって満たそうという考えは無くなったらしいが、万が一、念のためだ。



しかしこの言葉に、ザギは料理に向けていた意識を戻し、レイヴンを見てにやぁ、と意地の悪い笑みを浮かべた。
不敵、と表現できるかもしれない。
神経を逆なでするような顔だ。



そしておもむろにユーリの手を取り、あまつさえ首に手を回して見せた。
突然の事にユーリが抗議の声を上げているが、そんな事はお構いなしである。



自分の目の前で、ユーリが他の男と、体を密着させている。
その光景に、レイヴンはぴくりと眉を動かした。
恐らくこの男、判ってやっているのだ。




「何かしたら? 何かしたら承知しないと言ったのか?」




ぎゅう、とユーリを抱く手に力を入れ、ザギはレイヴンをにやにやと睨みつける。




「よく、てめえがそんな台詞を言えたもんだな。―――判るぞ、お前。そこのクリティアにも言えることだが・・・・・・前に見た、あのフレンとか言う騎士と、同じ目でユーリを見ているだろう?」




――――――こいつ!



レイヴンとジュディスの表情が強張る。
あからさまな挑発だった。
レイヴンとジュディスが、視線に込めている熱に気づくということは、自身もまた、同じ目でユーリを見ているという事だ。



若造が! とレイヴンは内心で舌打ちを鳴らす。
本当に、面倒な奴が現れてくれたものだ。




「安心しなぁ、ユーリ。お前は俺が守ってやるぜぇ」




この場で一人、疑問符を飛ばすユーリに、ザギが誓うように囁いた。



リズム感のあるジャズは、いつのまにか情熱的なタンゴに代わっていた。















―――――――――――――――
私の中でザギユリはこんな感じ希望!
いや本当、本編の中ではこの二人のやり取りが一番おいしかった気がする。
ザギはユーリ好きすぎる。
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