2009-11-18 20:09
追憶の迷い路でユーリが出て来たら妄想です。シリアス。
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現実のものとまったく同じ、ただ”人がいない”という点のみが異様であるダングレストで、皆は驚愕の余り体の硬直を解けないでいた。
現実では有り得ない静謐に包まれるその街の、幅広の橋の上。
光と闇の線引きで、明確に分別された”向こう側”から、ゆっくりと歩いてくる。
艶やかな黒髪。
漆黒の衣。
闇色の瞳。
それらに対比するように白い肌。
まさしくユーリ、その者であった。
もちろん、ユーリ”自身”はこちら側に確固として立っている。
つまりこれはユーリではなく、この迷い路が見せている幻影―――なのだ。
ここに来るまでにも、かつて倒したはずの”敵”と対峙してきた。
ベリウス、クロームドラゴン、イエガー―――。
そう、頭では理解している筈だ。
しかし、依存とすら呼べるほどの信頼を寄せている相手が、己へのあからさまな敵意を持って眼前に現れるというのは、想像を超えるほどの衝撃なのだ。
特に幼いカロルなどは露骨に不安がり、無意識にか「ユーリ、」と名を呼んでいた。
『ユーリ』がほんの数メートル先で、その足を止める。
こちらを見つめる瞳はある種異様な程に凪いでいる。
そうして不意に―――にこ、と、微笑んだ。
恋人との再会を果たしたような。
妖艶なそれ。
「よう。―――俺」
一同の顔が驚愕に歪む。
これは幻影、言うなれば魔物に近いモノである筈だ。
否、魔物とすらも呼べないモノだ。
それが、意思を持って喋っている!
「どうした? やっと逢えたんだ・・・・・・。もっと、楽しそうに、しろよ?」
「あ、貴方は―――」
「聞くな、エステル」
目を細め、凄艶にこちらを見るそれに、エステルが震える声で何事かを問おうとしたが、他でもないユーリ本人がそれを制した。
その声のあまりにも鋭く、冷たい響きに、仲間たちの背筋がぞくりと粟立つ。
長く旅をして来て、聞いた事の無い声だった。
それは、彼が殺してきたラゴウやキュモール、そしてザギに対するものと同じものだったのだ。
「聞くな。”こいつ”は敵だ。俺たちを脅かす敵。それ以上でも以下でもねぇ。だから―――」
ユーリが鞘を投げ飛ばし、白銀の刃を晒す。
「殺すだけだ」
殺す。
これほど明白に、敵意と殺意を表した言葉は無い。
それを受けてやっと、弾かれた様に皆も武器を構えた。
弓を。
矛を。
帯を。
杖を。
斧を。
しかし、そうして構え、筋肉を緊張させながら、この対敵について根本的な懸念を持つ者がいた。
ジュディスである。
歴戦の戦士を躊躇させる懸念。
それは―――。
――――――果たして本当に、殺意を持って戦えるだろうか、という事である。
(エステルの時とは―――また違う。彼と同じ姿をしているというだけで、こんなにも私の槍は迷う・・・・・・!)
おそらく―――否、確実に、他の皆も同じ気持ちであるだろう。
ここにいる者は一人の例も漏れず、ユーリに救われた者達ばかりなのだ。
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続いちまった!(また
ていうかまぁ、行ってないんですけどね追憶の迷い路!
大丈夫大丈夫、確か過去のボスが出てくるってだけの隠しダンジョンだった筈。
だいじょうぶだいじょうぶ・・・・・・(汗PR
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